DX時代に必要なIT人材とは、どのような能力や経歴を持つ人材なのか? またこれからなるためには?

最近よく聞く「IT人材」というワード。
「IT人材」は、DX時代におけるITとビジネスの架け橋としての役割が大きく期待されています。

新時代を担う「IT人材」とはどのような人物を指し、また、どのように育成すればよいのでしょうか?

本稿では、いま求められるIT人材とその育成法などについて解説します。

IT人材とは?

労働人口が縮小する中、極まるリソース不足の解決には大胆な事業転換が求められます。

新しい技術やそれに付随する考え方を取り入れる、いわゆるDXが急務です。

DX時代に的確な対応ができる“IT人材”は各企業の救世主として期待されています。

ところが、日本では”IT人材”という言葉が一人歩きしている感があり、具体的に”IT人材”を正しく把握している経営者やビジネス関係者が少ないのが現状です。

混乱を招いている理由は、求められる「IT人材」が時代とともに変化していることにあります。

「IT人材」といえば、かつてはPCやサーバーの仕組みや技術に詳しく、PCソフトの扱い方に習熟した人物を主に意味しました。代表的なPCソフトは文書・表計算・プレゼンテーションなどのオフィスツール、グラフィックツールなどです。

そうした「従来型IT人材」はたしかに今なお活躍していますが、時代の変化とともに特段珍しい人材ではなくなりました。

IT教育やリテラシーの高まりによって当該スキルが世間に浸透し、陳腐化したためです。

これに対し、「他の産業と結びつくことによって新しいサービスを産み出すことのできる」人材は 「高度IT人材」と定義されます。

具体的には、DX、AI、IoT、5G、クラウド、ドローン、チャットボット…といったデジタル分野の新たな専門的知識・経験と現場のビジネススキルを兼ね備える人材です。

「IT人材」はさまざまな新しいツールや技術を適切に現場に応用し、周囲の理解と協力を得ながら既存の技術インフラをリプレイス・発展し、効率性を高めることを目指します。

より広義には、組織変革後の中長期的なビジョンをも併せもった「DX人材」と捉えられます。 このように、新時代の「IT人材」は最新テクノロジーとビジネスの双方に通じていることが理想的な前提条件となります。

企業の取り巻くIT人材不足の現状

企業を取り巻く社会情勢は日々目まぐるしく変化しています。

こうした現状を鑑み、経済産業省が所管する情報処理推進機構は2009年から「IT人材白書」を発行してきました。

さらに、昨今のDXの進展に伴い、ITとビジネスの関係がより密接になったことを背景に「IT人材白書」や「AI白書」(2017年から発行)を統合した「DX白書2021」を発刊しています。

「DX白書2021」の第3部には「デジタル時代の人材」に関する記述があり、人材育成のあり方のほか、スキル評価や処遇といったマネジメント制度の整備の必要性も掲げています。

白書では「デジタル事業を実現」するには、以下のような人材からなるチーム体制が必要としています。

プロダクトマネージャー

リーダー格の人材

ビジネスデザイナー

企画・立案・推進等を担う人材

テックリード

システムの設計から実装ができる人材

データサイエンティスト

事業・業務に精通したデータ解析・分析ができる人材

先端技術エンジニア

機械学習、ブロックチェーンなど先進的なデジタル技術を担う人材

UI / UX デザイナー  

システムのユーザー向けデザインを担当する人材

エンジニア/プログラマー

システムの実装やインフラ構築、保守・運用、セキュリティ等を担う人材

まさに“理想のチームづくり”ではありますが、人材難の問題もあり、一部の大企業を除いた多くの企業にとって実現は難しいところです。

より現実的に捉え直すと、「従来型IT人材」は自社人材や市場から賄い、「プロダクトマネージャー」は技術のわかる「ビジネスデザイナー」か、ビジネスのわかる「エンジニア/プログラマー」が兼務するなど、配置転換上の工夫が求められるでしょう。

一方、DXの要で「高度IT人材」にあたる「データサイエンティスト」「先端技術エンジニア」は未だ希少で獲得競争が激しいため、それらの採用・育成が当面の課題となります。

IT人材を目指すためのリスキリングのサービスの紹介

IT人材が具体的にどのようなものか、みえてきたかと思います。

では、こうした「高度IT人材」を外部から獲得できない多くの場合、どうすればよいのでしょうか?

自社がもつ専門性の近い人材、適性をもった人材を見出し、然るべき人材に育て上げる、いわゆる「リスキリング」の実施が必要です。

リスキリング(Re-skilling)とは、業務遂行に必要となるスキルを学び直す、または身につけ直すことです。

時代の変化に合わせるためのリスキリングは、自ずと新しい方法論のフォローアップを意味します。

「高度IT人材」は定義上、幅広い専門知識を備えた「修士・博士人材」になりますが、全ての現場で高度なスキルが万遍なく必要なわけではなく、また専門養成機関が限られているのが現状です。

需要の高まりとこうした現状認識から、最近ではスポット的にスキルを高め、人材をリスキリングする学習サービスが増えています。

リスキリングサービスの例を以下にご紹介します。

Udemy

プログラミング、マーケティング、データサイエンスなど、183,000のオンラインビデオコースを選択できます。

Coursera

スタンフォード大学発祥の講師によるオンライン講座で、大学のコースのいくつかを提供しています。

edX

ハーバード大学とMIT発祥で、海外大学レベルの授業を無償で提供しています。

こうしたリスキリングサービスを活用して、自社人材をいかに効率よく、現場に必要な知識をもった人材に育て上げるかがカギとなります。

一方、ある調査によると、リスキリングの動きに対して国内企業の24%は明確な方針をもっていますが、約半数の企業は実施を検討すらしていないことが分かっています。
現状をふまえると、人材のリスキリングは臨戦態勢を整えて一歩抜きん出る好機ともいえるでしょう。

まとめ

「DX白書2021」によると、アフターコロナで最も求められる人材は「変革リーダー(DXを主導するリーダー)」とされています。

“人生100年時代”のいま、リスキリングに象徴される学び直しの流れはもはや不可欠です。

地道なリスキリングの先に、未来のビジョンを描けるリーダー創出がみえてくることでしょう。