ITの基本を解説 – チャットボットとは?導入時の注意点の解説

社会情勢の変化によって労働人口が急速に減少し、慢性的な人材不足にあえぐ多くの企業には迅速な省人化・省力化が求められています。

リソースが限られるなか、業態を問わず社内外からの問い合わせに対して有用なのがチャットボットです。

本稿では、チャットボットの活用事例や導入時の注意点などについてご紹介します。

チャットボットとは?


チャットボットとは「おしゃべり(Chat)をするロボット(bot)」を意味し、テキストや音声を通じて自動的に会話を行うプログラムのことです。
質問内容に対して単に検索結果を返す機械的な処理ではなく、人間同士がしているような柔軟性のある会話を目指しているのが特徴です。

チャットボットにはシナリオ型、人工知能型の2種類があります。

シナリオ型

特定のシナリオが事前に設定されており、シナリオに沿った会話が進められます。ルールベース型とも呼ばれます。

シナリオ型の場合、シナリオの質がユーザーの定着率を左右します。選択肢の設定が適切であればユーザーは望む情報が得られますが、設定が適切でないとユーザーは望む情報にたどり着けません。また、予めシナリオに含まれていない回答をすることもできません。

人工知能型

話し言葉に近いような質問文からもユーザーの意図を理解し、適切な回答をします。学習データが蓄積するのに従って回答精度が向上するのが特徴で、AI型・機械学習型とも呼ばれます。

チャットボットを活用すると人間味のある回答ができ、ユーザーの親近感を上げることができます。

具体例をみてみましょう。

<従来型検索の例>

Q「連絡先」
A「〇〇△△」

<シナリオ型の例>

Q「御社のご連絡先を教えて下さい」
A「弊社の連絡先は〇〇△△になります。」

Q「どちらにご連絡すればよろしいでしょうか?」
A「そちらの質問にはお答えすることができません。」

このように、質問文がシナリオにない場合、文意を理解した応対ができません。

<人工知能型の例>

Q「御社の連絡先を教えて下さい」「どちらにご連絡すればよろしいでしょうか?」
A「弊社の連絡先は〇〇△△になります。」 人工知能型の場合、定型的でない質問文でもキーワードから文意を推察し、適切な応対が可能となります。

チャットボットの活用事例

チャットボットを活用すると、人員削減や労働時間の短縮につながり、業務を大幅に効率化することができます。

チャットボットの実際の活用事例をみてみましょう。

不動産業界の導入事例

膨大な物件情報を有し、日常的に問い合わせが多い不動産業界はチャットボットが活躍する業種のひとつです。
大和リビング株式会社が2018年に導入したチャットボットは利用数が総問い合わせの約13%を占め、そのうち82%を回答完結しています。
問い合わせの自動化により、問い合わせ総数の約10%削減に成功しました。

また、チャットボットは社内問い合わせの削減にも貢献しています。

野村不動産株式会社では人事部門へ勤怠関連の問い合わせが多く寄せられており、対応の効率化が課題でした。
そこで、60億件を超えるSNS上の会話データの分析に基づく自然言語処理技術に特化した人工知能型チャットボットを導入。
勤怠関連に関する約300通りの質問・回答を学習し、リモートワーク社員からの問い合わせ対応にあたっています。

小売業界の導入事例

様々な用途の商品を扱う東急ハンズ株式会社ではフレキシブルな回答を行うチャットボットを導入。
導入後は回答の精度向上に努め、問い合わせを約50%削減しました。

観光業界の導入事例

多言語対応が求められる観光業務でもチャットボットの導入が進んでいます。
株式会社JTBは訪日外国人旅行者向けに人気の5地域を対象に、100通り以上の観光モデルプランを提供する無料の観光支援アプリを開発。
画面に常駐するチャットボットがアプリ内の豊富な機能をナビゲートし、訪日ユーザーはキャラクターと英語でチャットしながら、観光スポットやモデルプランを調べることが可能です。

チャットボット導入時の注意点

電話応対やカスタマーサービスなど、定型的な業務に主に用いられているチャットボット。

普及がある程度進んだ近年では新たな問題が浮上し、チャットボットの導入が高止まりしています。

その理由としては以下のようなものがあります。

・要望に沿った回答ができず、「使えない」と思われてしまう傾向がある
・導入側は「導入したら終わり」という認識が根強く、回答精度が向上しない

これらの問題は技術的な要因に由来し、チャットボットに限らず、AI技術全般で起きている問題です。
「AI」に対するユーザーの期待度が高い反面、「AI」開発が未だ道半ばである実情が根本的な背景にあります。

チャットボット導入時には以下の点を心がけましょう。

きめ細かな改善と運用が必要

問い合わせ内容が定型的でなく複雑で込み入っている場合、選択肢・学習データ・パラメータ等を調整し、精度をたえず向上する必要があります。問い合わせログを確認し、シナリオやFAQなどをユーザーのニーズに応じて改善・運用しましょう。

「AI」であることを前面に出しすぎない

現状のチャットボットの性能では人間が話すような「自然言語」を十分に理解することは不可能です。
にもかかわらず、「AI=人工知能」と大々的に打ち出すのは厳密には誤りであるため、「これくらいはできるだろう」とユーザーに過剰に期待させ、いたずらに失望を生むことになります。

二重のサポート態勢を整える

チャットボットがたとえ文法的には完璧な応対をしたとしても、状況やユーザーの属性によっては機械的で冷淡な応対に映り、あらぬ不満をもたらします。
「人の相手は人が行うべき」という乗り越えがたいジレンマを克服するためには、ヒューマンサポートに柔軟に切り替わる仕組みを採用し、ユーザーの心情に寄り添った応対をすべきでしょう。

とめ

多くの組織が悩む人材不足の解消に強い味方となるチャットボット。
年々普及が進む一方で、過剰な期待と裏腹に望む成果を出せないケースも多々あります。
このような場合、ユーザーの問い合わせログを確認するなど、現場に合わせた改善と運用が不可欠です チャットボットの活用事例と限界を知り、有効に活用しましょう。