再び高騰の気配をみせている仮想通貨市場ですが、一時話題になったビットコインが有名ですね。
ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨に使われているのが「ブロックチェーン」の技術です。
本稿ではブロックチェーンの基礎的な内容をわかりやすく解説し、またブロックチェーン技術を活用した事例を紹介します。
ブロックチェーンとは何か?
「仮想通貨=ブロックチェーン」としばしば誤解されますが、仮想通貨は通貨の名称、ブロックチェーンは技術の名称であり、別のものです。
ブロックチェーン不使用の仮想通貨もあります。
日本ブロックチェーン協会によると、ブロックチェーンの定義は「ビザンチン障害を含む不特定多数のノードを用い、時間の経過とともにその時点の合意が覆る確率が0へ収束するプロトコル、またはその実装」とされます。
より広義には「電子署名とハッシュポインタを使用し改竄検出が容易なデータ構造を持ち、且つ、当該データをネットワーク上に分散する多数のノードに保持させることで、高可用性及びデータ同一性等を実現する技術」です。
専門用語が満載ですが、端的に言うと、ブロックチェーンの開発目的は「社会で共有するデータが第三者に改ざんされない」ことであり、そのために「分散型の数理的な仕組み」を備えています。
「改竄検出が容易なデータ構造」とはどういうことでしょうか?
データの改ざんを防ぐには暗号が必要です。そのために、データの特定に長けた暗号化技術(ハッシュ)を利用しています。
たとえば、ビットコインで用いられる「SHA256」というハッシュ関数(計算式)を通すと、入力データ(文字列)に固有な値(ハッシュ値、64桁の16進数)が出力されます。
入力データがたった1文字違うだけで出力値が全く異なるため、逆にハッシュ値から入力データを特定できます。
これにより、データの改ざんや破損を瞬時に検出できるわけです。
また、ハッシュ値の桁数は一定(固定長)なので効率的な通信を実現します。
ハッシュポインタとは、ハッシュ値を使って隣同士のデータを連結するポインタ(変数)のことです。
データの各単位は「ブロック」と呼ばれ、ブロック同士が連結していることが、ブロックチェーンと呼ばれる所以です。
ブロックチェーンの特徴は?
仮想通貨を例に、より詳しく説明しましょう。
従来の紙幣であれば、誰かが故意に破かない限り、価値が変わらないのは当たり前でした。
ところが、不特定多数のノード、すなわち世界中のコンピュータが接続しているネット上ではハッキングの恐れがあり、決して当たり前ではありません。
ブロックチェーンの大きな特徴は「分散型台帳」と呼ばれる独自の仕組みによってデータを保管していることです。
仮に、Aさんが1ビットコイン(BTC)、Bさんが2BTC をそれぞれ保有しているとします。
このとき、システムの誤作動、あるいは何者かの意図によって、Aさんが保有する「1BTC」 のデータが突然100BTCや0BTC に価値が変わってはいけません。
そのためにBさんも、Aさんの保有する「1BTC」 のデータを共有します。逆にAさんも、Bさんの「2BTC」のデータを共有します。
また、BさんがAさんに送金すると、その送金記録も2人の間で共有されます。
同様に、世界で1000人がビットコインに参加すると、1000人全員がAさんのデータ、Bさんのデータ…1000人分のデータ、互いの送金記録を共有します。
こうして、“みんながみんなのデータを持っている”状態が作り出されます。
すると、仮にAさんのコンピュータでハッキングが起きても、残りの大多数のコンピュータはAさんの正しいデータを保持しています。
したがって、多数決によって正しい保有額が復元されます。
これが、分散型がデータ改ざんに強い理由です。
中央のサーバーがデータを一元管理する従来の仕組みでは、ハッキングが悩みの種でした。
「分散型=非中央集権型」と呼ばれるこのような仕組みによって、ブロックチェーンは“当たり前”のセキュリティを担保しているのです。
ブロックチェーンを活用したサービスや事例の紹介
ブロックチェーンはそのセキュリティの高さから、証券や決済、投票システム、貿易プラットフォーム、公的文書など様々な分野への活用が期待されています。 各分野でサービスの実施や開発が始まっています。
教育証明
事情により高等教育機関に通えない難民などの人材を救済し、デジタル教育を受けられるシステムが必要とされていました。
スイスのODEM社はブロックチェーンによる「通学なしで高等教育の修了を保証する」システムを開発しています。
スマートコントラクト
東京海上日動火災保険では、2020年からブロックチェーンによるスマートコントラクトを用いた保険金支払業務の自動化の実証実験を行いました。
今後、業務効率化が期待されています。
食の安全
ウォルマート社やネスレ社は、IBM社が2018年に運用を開始した「Food Trust」というブロックチェーンによるトレーサビリティシステムを利用しています。
食品の生産流通・検査証明・認定証書のデータを共有できるため、流通経路の特定に時間がかからなくなりました。
著作権管理
ソニー株式会社は2019年からブロックチェーンを用いて音楽の権利を管理しています。
これにより権利が作成者と利用者の間で共有されるため、業界団体を経由する必要がなくなりました。
電力取引
みんな電力株式会社はブロックチェーンを活用した独自の電力トラッキングシステム「ENECTION2.0」を採用しています。
約40万kWの再生可能エネルギー電源を集約し、企業が再生可能エネルギー電力を発電所から直接購入できる仕組みです。
銀行での本人確認
みずほ銀行や三菱UFJ銀行などの研究会でブロックチェーンの実証実験が行われ、簡易的な本人確認は充分に可能であることが示されました。
今後、法的整備等の課題が残されています。
まとめ
高度な分散型の暗号化技術によってデータ改ざんを防止できるブロックチェーンは、金融業界にとどまらず、食品・エネルギー・エンターテイメント・保険・教育などさまざまな業界で活用事例があります。
インターネットの新たな時代を切り開くのに欠かせない技術として、今後ますます活用が進むことでしょう。