ITの基本を解説 – 今さら聞けない「オープンソース」とは?

ITやデジタル関係の業務に携わっていると、「オープンソース」という言葉をしばしば耳にすることがあるかと思います。
よく聞くオープンソースとはどのような意味をもつ用語なのでしょうか?

本稿では、オープンソース(OSS)とは何か、オープンソースを利用する場合の注意点などについて解説します。

オープンソースとは何か?

「オープンソース」とは、オープンソースソフトウェア(OSS)の略称で「ユーザーの目的(商用/非商用)を問わず、ソースコードの使用・修正などが可能なソフトウェアの総称」と定義されます。

端的には、文字通り「オープンに公開されていて、誰でも使える無償のソフトウェアやライブラリ(プログラムの部品の集まり)」と捉えてよいでしょう。

通常の使用にあたっては著作権を気にする必要はありませんが、製品などに含めて出荷する場合、著作権侵害にならないよう著作権者からの許諾が必要です。

オープンソースには歴史があり、有用なソフトウェアが非常に多いため、そうとは知らずに長年使用しているケースも少なくありません。

有名なオープンソースには以下のようなものが知られています。

・オペレーティングシステム(OS)のLinux

・文書、表計算ソフトウェアOpenOffice

・データベース管理システムMySQL

・インターネットプラウザFirefox

・オンラインストレージNextcloud

・WebサーバApache

・プログラミング言語Java

・ブログソフトウェアWordPress

・暗号通貨ビットコイン

その便利な機能をたくさんの人々に幅広く使用してほしいという思想のもとで開発されています。

成功したオープンソースの好例はLinux OSです。1991年にフィンランドの大学院生によって開発され、その後世界中の有志の開発者たちにより改良が重ねられました。
リリース以来、家電・ゲーム機・スマートフォンなどに幅広く活用されています。 特定の企業内のルールに縛られないため、オープンソースは概して開発スピードが速いのが特徴となっています。

オープンソースが広く活用される理由と、テクノロジー業界の特徴

オープンソースはどうしてこれほど浸透し、支持を受けるに至ったのでしょうか?

これまで商業ソフトは一般に高価で、改変に許諾が必要なため、機能に優れていても広まるスピードが遅いという決定的な欠点がありました。

一方、オープンソースは自由に利用・改変でき、機動力に優れるため、より多くのユーザーにスピーディーに認知され、結果的にITカルチャーの広まりを加速させました。

オープンソースのソフトウェア開発方式に関する書籍に、オープンソース推進団体の創設者が1999年に著した『伽藍(がらん)とバザール』(訳書は2010年)があります。

同書では、少人数の開発者が置かれて完成度を重視する開発方式を「伽藍」、不特定多数の開発者が自由に利用でき、完成度は問わない開発方式を「バザール」にたとえました。

「バザール」方式は、まさに誰でも出入りができるバザールのように、自由闊達な議論や意見交換が可能なコミュニティーの発達を促します。

「バザール」方式は、オープンソースの成功例であるLinux OSやApacheの開発で採用されました。

このように、オープンソースは良くも悪くも雑多な環境下で生み出されるイメージをもちます。

テクノロジー業界は従来型産業と異なり、特許などを出願する習慣が少なく、広く公開する文化があったことが背景にあります。

一方、IT企業側からみると、テクノロジー業界の革命児だったオープンソース。
オープンソースを当初から警戒していたマイクロソフト社も、2010年代からはオープンソースを取り入れたり、提携するなど積極的に活用する動きをみせています。
今やオープンソースのイベントに企業が出展し、国内外で協業するなど、さまざまなレイヤーで融合が進んでいるといえるでしょう。

オープンソースを活用する場合の注意点

さまざまな点で利便性に優れるオープンソースですが、活用にあたっては注意点もあります。
2021年末、Javaライブラリ「Apache Log4j」の脆弱性の問題でオープンソースが注目を浴びました。

オープンソースの「Log4j」はさまざまなJavaアプリケーションに使われているため、一部の大企業にも影響が及びました。
事の重大さを鑑みたアメリカ政府からは、テクノロジー業界に対するオープンソースの重要性を認める声明が出されました。

オープンソースの開発者は不特定多数の有志や非営利団体のほか、特定の個人の場合もありますが、善意で開発を行っており、管理責任を追及されることは基本的にありません。

なかには、iPhoneから冷蔵庫・テレビ・自動車に至る多くのコネクテッドデバイスで使用されているオープンソースを一人の開発者が30年近く管理しているケースもあります。

その多大なるメリットは、裏を返せば脆弱性と紙一重でもあります。
世界中の開発者有志のこうした無償の努力によって支えられているオープンソース。

開発者にとって改善されない状況を長年放置した企業側のモラルを問うべく、あからさまに抗議する開発者も現れるなど軋轢もあり、問題は年々表面化しています。

一方、ユーザー側にもオープンソースの使用にあたっては相応のプログラミングの知識が求められます。

オープンソースの場合、開発元のコミュニティに不具合の責任はないため、仮に問題が起きたとしても自力で解決しなければなりません。
したがって、企業がオープンソースを利用する場合はこれらの点に留意し、セキュリティ障害などの万一の脆弱性や、ソースコードによる不具合など、あらゆるリスクを考慮したうえで活用する必要があるでしょう。

まとめ

企業に依存しない有志によって開発・管理され、利便性や柔軟性に優れたオープンソース。

テクノロジー業界の発展に大きく寄与する一方、開発者の善意によって成り立つサービスゆえにサポートの脆弱性をも兼ね備えています。
オープンソースの長所・短所を熟知したうえで、有効な活用を心がけましょう。