DXの先行事例と活用される技術の解説

DXでよく耳にする技術には横文字の略称が多く、それぞれ具体的に何を指し、実際にどのような企業サービスに用いられているのか、いまいちピンとこないものです。
本稿では、DXの成功事例でよく活用されている最先端技術(AI、IoT、クラウドサービス 、AR/VR/MR)と企業における活用事例をご紹介します。

DXで活用される技術とは

DX とはデジタルトランスフォーメーション(Digital transformation)の略称で、ITの浸透が人々の生活をより良い方向に変化させることです。

DXを活用し、実現するには最先端技術の理解が欠かせません。

どのような場面でどのDXを実現すると恩恵がもたらされるかが分かり、具体的かつ現実的な提案を見出すことができます。
DXの事例でよく活用される最先端技術には、以下のようなものがあります。

AI

自己学習を特性とする「ディープラーニング」でおなじみの人工知能(AI)は、画像認識・音声認識・音声合成・運動学習など用途が広く、汎用性がきわめて高いのが特徴です。
防犯カメラや、チャットボットによる応対、スマートスピーカーなど、さまざまな産業用途に活用されています。

IoT

“モノのインターネット”と称されるIoTは、これまで電子端末に限られていたネットワーク機能をセンサーや家電製品、産業用ロボットなどに組み込むことを意味します。
5G通信技術と相まって製品間の連携したコミュケーションが可能になり、状態モニターやリモコン制御など新たな用途を広げています。

クラウドサービス

従来は利用者が手元のパソコンなどのコンピュータで利用していたデータやソフトウェアを、インターネット経由で提供されるサービスです。
端末同士やアプリケーション同士の連携がしやすく、省コスト化やリモートワーク推進に貢献しています。
また、AIやIoTを支え、学習能力や対応能力を高める役割も果たしています。

AR/VR/MR

ARは拡張現実、VRは仮想現実、MRは混合現実をそれぞれ意味します。
共通するのは「実際には存在しない仮想物を表示して、新たな体験を生み出す製品やサービス」を扱うことです。
現地に行かずに済み、人や物品の移動コストの低下を可能にしたこれらの技術は観光や不動産の内見、リモート会議などに活用されています。

国内のDXの活用事例

経済産業省が選定する「DX銘柄」とは「企業価値の向上につながるDX推進の仕組みを社内に構築し、優れたデジタル活用の実績が表れている上場企業」(業種ごとに最大1~2社ずつ選定)です。

その選定基準は、
①アンケート調査回答・ROEのスコアが一定基準以上
②評価委員会における取組の評価が高い
③重大な法令違反等がない
の3点となっています。 「DX銘柄2021」の中から、注目技術の活用事例をご紹介します。

AI活用事例

株式会社ベネッセホールディングスは高校生の日々の学びをサポートする学習アプリ『AI StLike』を開発しています。
講師による映像授業と、AIによる問題演習を組み合わせることで、ひとりひとりの理解度・習熟度に合わせた最適な学習の実現を目指しています。

IoT活用事例

地域の独居高齢者は年々増加し、コミュニティの希薄化で孤立しやすい状況にあるため、「高齢者の見守り」という課題が顕在化しています。
ヤマトホールディングス株式会社は、外部との通信が可能なIoT電球「HelloLight」を活用した見守りサービスの実証事業を実施しています。

クラウドサービス活用事例

ANAホールディングス株式会社は飲食や観光などの情報検索から航空利用まで、一連の手配がシームレスに完結できるサービスを目指しています。
その一環として、国内線/国際線の予約・発券・搭乗、航空機の運航実績、貨物輸送実績などのデータが蓄積されたデータウェアハウスをアマゾン社のクラウドサービスに移行しています。

AR/VR/MR活用事例

東日本旅客鉄道株式会社はVR技術と5Gを活用した未来の物産展の実証実験を実施しています。
リアル空間とバーチャル空間を掛け合わせた新しい観光・購買・飲食体験を実現する流通小売りシステムで、多階層VR空間内にてユーザーが自由な移動や体験を共有できます。

DXの成功要因は

こうした成功事例の一方、経済産業省が昨年末に発表した「DXレポート2」によると、国内企業の95%が未だ「DXに全く取り組んでいない」「散発的な実施にとどまっている」と答えています。

新型コロナ感染拡大を受けてDXの加速に期待がもたれたものの、残念ながら顕著な状況改善はみられなかったのです。

DXの成功要因はどのあたりにあるのでしょうか? “What”と“How”に分けて考える必要があります。

What①データ

DXの実務上、問題になることが多いのがデータの取扱いです。
国内では社内独自のルールで管理されている事例が多く、その不備は活用上の障害になるため、汎用性を上げるためのメタデータを整備・管理する必要があります。

What②人材

組織を変えるのは最終的には技術ではなく、優れた少数の個人です。
誰でも務まるわけではなく、データ・AI・IoT・クラウド・AR/VR/MRなどのいずれかに特化した知識をすでにもち、かつセキュリティなど日進月歩の周辺知識をアップデートできる柔軟性、及び現場対応力・判断力を兼ね備えた人材や部隊が必要です。

How①導入

大多数の企業にとって最低限必要なDXは共通であり、技術的にはイチから作る必要はありません。
“ものづくり信仰”の悪しき風潮から抜け出し、広く利用されている目的に沿ったツールやサービスを大いに導入しましょう。

How②戦略

とはいえ、全ての企業に同じ型のDXが必要なわけではありません。
一般的なデジタル化施策をひと通り終えた後はひとくちにDXといえど手段は幅広く、そこに一歩進んだ難しさがあります。

上述の成功事例はいずれも「強みを伸ばすか、弱みを補うか」の明確な方向性をとっています。
やみくもに手をつけると失敗事例のように取っ散らかる恐れもあります。
長期的な展望のもとで数年後のビジネスモデルを見据え、自社が本当に求めるデジタル化・自動化を見極めて戦略的に取り組みましょう。

まとめ

DXの進展を助ける最先端のデジタル技術を円滑に取り入れるには、成功事例に学びつつ、データや人材など周辺環境の整備や戦略的な導入がカギとなります。

DXやデジタルの本質は「働く個人がより便利に、より快適に」という思想にあります。 ”リソース不足”を嘆かず、明るい未来に向けた活用を模索しましょう。