DXとデジタル化の違いは?中小企業向けにおすすめの業務改善

デジタル技術は人を助けてくれる心強い味方ですが、DXと聞いて、イメージするものは人によってさまざま。

ふんわりした言葉の定義をしっかり理解し、DXが活躍する実際の事例を知って現場に活かせれば日々の業務改善につながります。
本稿では、DXとデジタル化の概念を解説し、DXの活用事例をご紹介します。

DXとデジタル化の違いは?

DXとデジタル化の違いはどこにあるのでしょうか?

DX (デジタルトランスフォーメーション)とは、「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」で、情報技術と現実が融合して結びつく変化をもたらすことです。
ビジネスの世界では、便利な効率化を目的としたデジタル化を行った先に「人々の意識やビジネスの進め方、ビジネスモデルまでガラリと変わること」を意味します。

例えば、スマートフォンやデジタルカメラで撮影した写真をネット上にアップロードし、インスタグラムなどのSNSサイトで共有することが今では浸透し、一般的になりました。

このように、人々の行動や意識が生活レベル・文化レベルで変わったことは「カメラ/写真のDX」といえます。

一方、デジタル化とは、かつてフィルムカメラがデジタルカメラになったように「アナログ情報がデジタル化されるプロセス」そのものです。

他に身近な業務でいえば、紙の書類の管理をPDFなどの電子データで管理することや、手入力によるデータ処理の自動化などにあたります。 日常的な意味では「各種デジタル化を行ったうえでの到達地点がDX」と理解すればよいでしょう。

ビジネスにおけるDXの意味をカメラの例で考えてみましょう。
デジタル化によって、利用者側はフィルムの準備や写真の現像・加工・保管、共有連絡の手間がなくなり、大変便利になりました。その反面、事業者側はネガフィルムはおろか、カメラそのものさえ販売形態やビジネスモデルの大掛かりな変更を余儀なくされました。

まさに「カメラ/写真業界のDX」が起こったのです。 このように、DXはその推進によって、最終的には様々な産業構造が変わり、社会全体の価値観が刷新されることを含意しています。

業務効率化を目指すための方法を紹介

業務のデジタル化はDXの第一歩です。

デジタル化による業務効率化を行う上では、ゴール(目的)を決め、業務の整理と可視化が肝心です。

「社内全体としてデジタル化で何を目指すのか」という目的意識を先に設定しておくと、「何をどこまでデジタル化すればよいのか」のリストが逆算によっておのずとみえてきます。

また、デジタル化を行ううえで主な障壁となるのは、
①人的障壁
②コミュニケーション障壁
の2つです。

①人的障壁

社内カルチャーをその歴史から深く理解しないまま変革を行おうとすると、人々は急激な変化に頭がついていかず、思わぬ反発の種になります。

時間をかけて感情を汲みながら論理的に説得し、周囲の理解を得ることが肝心です。 そのためには、ときには社内の人材ではなく、外部の第三者が先導的な役割を果たすことが必要な場合もあるでしょう。

②コミュニケーション障壁

「DX/デジタル化」は複雑な技術知識が絡むため、分かりにくいばかりでなく、場所や状況によっても定義が曖昧な概念です。

曖昧なまま施策を推進すると、互いのイメージするものが食い違い、トラブルや摩擦の元になりがちです。

こうしたコミュニケーションの障壁をクリアするには、コンセプトを共有するために業務を逐一「見える化、言語化すること」が大事です。

まずは施策のメリット・デメリットを提示しましょう。

そして、英語の”5W1H”に従い、「何を、何のために、どのようにして、どれくらいの期間で、誰が、どの範囲で、どのくらいのコストで行うのか?」を施策ごとに細かく考え、オープンに書き出してみることが大切です。

計画に論理性が欠けていたり、相互矛盾があれば、それに気づくきっかけにもなります。
特に大切なのは、”Why”の質問に備えることです。
得てして、人は保守的なもの。 「どうしてそうする必要があるのか?」を個々のステップにおいて丁寧に掘り下げることが、周囲の賛同を得ることにつながるでしょう。

国内の中小企業の多くはそもそもデジタル化ができていない状況にあります。
デジタル化そのものは、今や敷居が高いものではありません。

ソフトやサービスなどの幅広い選択肢の中から、比較的安いコストで自社の用途やニーズに合ったものを導入することができます。

恒久的な事務作業にかける業務時間や人的コストを削減し、ペーパーレス化やRPA化は昨今問題となっている環境問題の改善や働き方改革にもつながります。 以下に、デジタル化による業務効率化の事例を紹介します。

請求書や見積

インターネット広告事業を展開する株式会社アイズは主力サービスのメディアレーダーの請求業務にクラウド請求書サービスを活用しています。
CSVデータを読み込んで請求書の形式に整えたPDFを作成し、メール送信・印刷機能を利用。膨大な請求業務が1日で完結しています。

社内書類のペーパーレス化

コニカミノルタジャパン株式会社は社内書類を紙から電子化し、支店を含め社内保管文書の88%削減に成功しました。
営業の直行直帰習慣の定着や、フリーアドレス・テレワーク形態の促進につながり、また「電子請求サービス」への移行など他の事業活動にもプラスの影響を与えています。

RPA(業務の自動化)

ネットスーパーを開設したディスカウントストアのオーケー株式会社は顧客の多様なUXや機能性向上のためにテスト工数が肥大化していました。
RPAツールを導入し、テストの自動化に取り組んだ結果、UX品質を担保しつつ生産性も向上しています。

契約や稟議(承認業務)のデジタル化

株式会社東京コンサルティングファームは電子稟議システムの導入によって、法的根拠の下の紙の廃棄を可能にして、保管コストの削減を実現。
稟議の申請と承認の自由度が上がり、業務の整理、可視化につながり、業務効率が大幅に向上しています。

まとめ

産業構造を変えるDXの第一歩となる目の前のデジタル化は重要なステップです。
書類のペーパーレス化や業務のRPA化は日々の業務を飛躍的に効率化させます。

また、デジタル化をつつがなく行うためには周囲の理解と協力が不可欠です。 ゴール設定や、それを共有する”見える化・言語化”を心がけて円滑に進めましょう。